今日は、エンジニアは普段からどうやって、問題解決を図っているか?という観点で話をしたいと思います。
でも、仕事に関連した話になると、C言語がどうとか、オペアンプの出力がどうとか、専門的な話をしなくてはならなくなります。
でも、こういう専門的な話って、少しでも勉強していないと理解ができないですし、そもそもあまり面白くありません。
そこで、今回はもう少し一般的なトラブルを例にして話を進めたいと思います。
先日こんなことがありました。
筆者は車が好きで、トヨタのカローラフィールダーのMT車(ミッション車)に乗っています。エンジンをスタートさせたあと、何もしていないのに、エンジンがブルブル震えてエンストしそうになる、というトラブルに見舞われました。
エンストって、何かというと、「エンジン・ストップ」の略らしいです。要はエンジンが止まるということです。
最近のオートマチック車では、ほとんどないのですが、ミッション車ではアクセルを踏んでエンジンの出力を上げると同時に、クラッチを切って、動力をトランスミッションに伝えなければなりません。このいわゆるスタート時の”半クラ”がうまくいかないと、車が「カックンカックン」してエンストします。
たぶん、エンストを経験せずにミッション車に乗れるようになった人はいないんじゃないかと思うくらい誰もが経験することです。
あの半クラが失敗したときのエンジンが「カックンカックン」する感じがずっと続くのです。経験した人は分かると思いますが、すごく気持ち悪いです。
どれくらい気持ち悪いかというと、「昼ご飯に食べたイカ天の切れ端とかが、歯の間に挟まったまま夕方までずっと仕事し続けるとき」くらい気持ち悪いです。
車を修理しようと思ったら普通はオートバックスとかに持っていて、診てもらうことになるかと思います。
私もどうしても直したいと思ったのですが、ちょうどそのころ車を使う予定が立て込んでいたため、周囲に出すのもためらうような状況でしたので、何とか原因を突き止めて、解決できないか?と考えたわけです。
私は車の専門家ではないですし、走り屋として車をイジリ倒しているわけでもないですので、どこから調べてよいものかさっぱり検討もつきません・・・。
そこで、普段使っているロジカル・シンキング、、、というとちょっと大げさなのですが、「論理的に思考することでエンジンがブルブルする原因を突き止めてみよう」と考えた訳です。
今回は車が例になりますが、エンジニアがどうやって問題解決をしているのか?その一端をお見せできればと思います。少し長いですが、どうぞお付き合いください。
1.早速ググってみた。
エンジンがブルブルする原因はなんなんでしょうか?Google先生に聞いてみました。
「🔍エンジンブルブル 原因」
すると、ま~いろんな原因が出てきます。ある記事によると、「エンジンがブルブル震えるのは、点火系統、吸気系統、燃料系統、エンジン内部のどれか、またはその全部に原因があります」みたいな超広範囲な理由が出てきます。
草野球で監督から、「おまえたちは、守れない、打てない、走れない、コミュニケーションがとれていないのどれか一つ、もしくはそのすべてに原因があるから負けたのだ」と反論のしようのない説教を受けるような気分です😨
いったい本当の原因はどれなのでしょう。どれかに絞らないことには対策のしようがありません。
しばらく調べていると以下のような記事を発見しました。
エンジンの回転数が異常に小さくなっていないか確認せよ。もし回転数が小さくなっていれば、エンジンブルブルの原因はエンジンの回転数が落ちていることが原因です。
なるほど、エンジンがブルブル震えるのは、エンジンの回転数が正常よりも大幅に落ちてしまい、エンスト直前のようにカクカク震えてしまうことになるようです。
さっそくカローラのエンジンをかけてみました。通常アクセルを踏んでいない状態だとは700回転/minくらいの回転数になっていないといけないそうですが、この時は500回転/minくらいにまで落ちていました。
直接の原因はアイドリング時にエンジンの回転数が異常に低くなっていること、ということになります。
その証拠という訳ではないのですが、クーラーをかけるとエンジンの回転数が上がり、それにともなってエンジンのブルブルがおさまることが分かりました。どうやら空調システムやその動きに伴う「空気の流れ」に絡んでいるかもしれません。
今回の調査(観察)で確信が持てたこととしては以下2点です。
- アイドリング時のエンジンの回転数が正常よりも落ちている。
- 空調を動かすとエンジンの回転数も上がり、エンジンブルブルがおさまる。
今回の調査から言えることとしてポイントは以下です。
まずはしっかりの症状や状況を観察すること。
この次は、ではなぜエンジンの回転数が低下してしまうのか?を調べることになります。
2.エンジンの回転数低下の原因をググってみた
しばらく調べてみると、エンジンの回転数がアイドリング時に低下してしまう現象は「アイドリング不調」などと呼ばれていることが分かりました。
ですので、検索には「アイドリング不調」を含めた検索が必要です。
「🔍エンジン 回転数 低下」
「🔍アイドリング不調 原因」
とかで調べていきます。調べていくとおおよそ以下のような原因の候補が見つかりました。このタイミングでやっておいたほうが良いこととして、原因がそれだったと仮定して、その原因を取り除いたり、修理するのにかかる、時間的コストや経済的なコストについて、おおよその概算でもいいから見積もりをしておくことです。ようは修理や部品交換にどれくらいの期間と費用が発生するのかまで、だいたいで良いので調べておくことです。
そうすることで次のステップに進みやすくなります。
今回は調べていくうちにおおよそ、以下のようにだいたい7つくらいの原因が考えられることが分かってきました。
参考になったのは例えば以下のようなサイトです。
https://kaitori-shitadori.com/truble-repairs/idling2/
このサイトでも以下のように、エンジンが震える症状は原因の特定が難しいとされています。
再現性の低い症状は、ディーラーや整備工場でも原因を突き止めるのは困難です。その場合は時間と高額な工賃作がかかります。
その1、エンジンが冷えている。
原因の最初は、意外ににもこんなことなのです。灯台下暗し、、、ならいいのですが。
エンジンが振動するとき、車のインパネ部分に、ヨットの形や「C」が点灯してるかどうかを確認します。
このマークは「水温警告灯」といい、エンジンが冷えている状態です。
エンジンが冷えているとアイドリングが安定しないためブルブルと振動を感じます。
エンジンが暖まると振動も無くなるので心配はいりません。
ということは、エンジンをしばらく稼働させた状態であたため、エンジンが温まった時にブルブルが止まるかどうかを確認することで、エンジンの冷えによるものかどうかを検証することができます。
経済コスト | 0円 |
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時間コスト | エンジンをかけて温まるまでの時間 |
その2、インジェクター(燃料噴射装置)の不具合
Ferrous BüllerCC 表示 – 継承 2.0 / CC BY-SA 2.0
インジェクターは、燃料ポンプからガソリンを吸い上げて霧状に噴射する装置です。
エンジンのタイプにより装置の種類は異なりますが、通常4気筒のエンジンだと4つのインジェクターが付いています。
インジェクターが正常に作動していない場合、アイドリングが不安定になる原因になります。
不具合のある個所を清掃して汚れを取ることで解決できる場合もあります。
故障の場合は交換となりますが、素人に交換するのは難しそうです…。
経済コスト | 1本あたり1万円~3万円ほど。 |
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時間コスト | インジェクターの清掃または交換にかかる時間。 |
その3、スパークプラグ
車はガソリン(ディーゼル)を燃やして駆動しています。燃やすための着火装置がスパークプラグ(以下、プラグ)と呼ばれる部品です。
プラグから火花が飛ばなくなると、エンジンが不安定になり回転数が落ちてしまいます。
回転数が落ちることで、「ブルブル」と震える症状が出てしまうのです。
プラグは消耗品なので寿命があります。一般的なプラグは約2万kmの走行距離で交換が目安とあります。Σ(゚д゚lll)ガーン
7万km以上乗っていますが、いままでスパークプラグの交換などしたことがない気がします。けっこう怪しいです。
イリジウムなど長寿命型のプラグで約10万Kmが交換目安とされています。
また、スパークプラグに電圧を送る導線「プラグコード」が劣化するとリーク(漏電)するため火花が飛ばなくなります。プラグコードは10万kmの走行距離が交換の目安です。
経済コスト | 3千円~2万円 |
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時間コスト | 交換にかかる時間 |
その4、ICSVの不具合
ISCV(アイドル・スピード・コントロール・バルブ)とは、アイドリングの回転数を自動制御する装置です。
エンジンを始動させたときに、エンジンを温めるために回転数が高くなりますよね。その制御をISCVが行っています。
また、エアコンを付けた時などバッテリーを消耗する場合も同じです。回転数を高くし電圧が安定供給されるよう司令塔の役目を担っています。
ISCVに不具合がある場合アイドリングが不安定になり、アイドリング時に「ブルブル」震える症状が発生します。
ISCVの不具合は、清掃し内部の汚れを除去することで解決できる場合もあるようです。
カローラの場合、ISCVがどこにあるのかは分かりませんでした。素人がやるには随分とハードルが高そうです。
経済コスト | 3万円~5万円 |
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時間コスト | ISCVの交換にかかる時間 |
その5、エアクリーナーの目詰まり、汚れ
エアクリーナーは、車体の外部から空気を取り込み、エンジンに送る途中にあります。
ボンネットを開けると比較的目立つところにあります。
エンジン内部の汚れの原因となるゴミやほこりを除去する役目を担っているパーツです。
エアクリーナーが汚れてしまうと性能を発揮できなくなるため、エンジン内部が汚れてしまいます。
エンジン内部が汚れると燃費が悪くなるばかりではなく、エンジンが故障してしまう場合もあります。
故障の前兆としてアイドリングが不安定になることがあるようです。
もしこれが原因ならこのまま車を使い続けるとエンジンが故障する、ということになります…😨ヤバい…。
エアクリーナーは通常、3万km~5万kmの走行距離で交換が目安になります。7万kmの走行なので、1回は交換していないとまずい、ということになります。
経済コスト | 5千円程度 |
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時間コスト | エアクリーナーの交換にかかる時間 |
その6、エアフロメーターの故障
エアフロメーターは、上述のインジェクターが燃料を噴射する際に、空気の吸入する量を計測して電子制御する装置です。
エアフロメーターに不具合がある場合、清掃することで解決できる場合もあります。
あとで分かったことですが、エアフロメーターのことをエアフローセンサーなどと呼ぶこともあるそうです。
また、エアフロ―メーターの説明とエアクリーナーの説明がごっちゃになったようなサイトもあり、エアーフローメーターは、エアコンに流入する空気量を調節している制御装置だという説明もあり、かなり混乱しました(-_-;)
ですが、エアフロメーターとエアフロセンサーは同じものをさしているようで、エンジンを電子制御する際の入力情報としてエンジンへの空気吸入量を計測する装置である、ということで間違いないようです。
経済コスト | 1.5万円~3万円程度。 |
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時間コスト | エアフロメーターの交換にかかる時間 |
その7、エンジンマウントの劣化
エンジンマウントは、車両とエンジンを連結している部品です。エンジンを支えているだけでなく、振動を吸収する役目も担っています。
このエンジンマウントが劣化すると、振動を吸収できないためにエンジンの振動を強く感じてしまうようです。
エンジンマウントの修理は、新品と交換することで解決します。
エンジンマウントはカローラの場合、どこにあるかは分かりませんでしたが、素人に交換するのは難しそうな印象です。
経済コスト | 2万円~4万円 |
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時間コスト | 交換にかかる時間。 |
ここまででも、かなりの数の原因の可能性があることが分かりました。
ここでポイントを言うとしたら以下のようになります。
原因の候補を洗い出す(ググる)。そしてコストを見積もる。
そして、ここからは
どの原因候補が怪しいか?
試すとしたらどこからやっていったら良いか?
を、失敗したときのデメリットなども考慮して、優先順位を決めていきます。
急に現れた不具合ですので、原因が複数にまたがることは考えにくく、本当の原因を一つ追及することができれば、こういうのは解決します。それは電子回路であっても車であっても同じことです。
少し長くなりましたので、ここからの優先順位づけのステップはまたこの次にしたいと思います。お疲れ様でした。
つづく。